“豊の国”大分県。その豊かな自然がはぐくむ海の幸、山の幸は、各地の風土に根差した、バラエティー豊かな郷土料理を生み出している。そして、大分県は麦焼酎の本場としても名高い。
大分各地の郷土料理と本場の麦焼酎『知心剣(しらしんけん)』を巡る旅。
第2回は津久見市の「冷汁(ひやじる)」を紹介する。
津久見湾を取り囲む海岸線に、山地が迫る。豊後水道のリアス式海岸に位置する津久見で、人々は古くから、海と山両方の恵みを受けて暮らしてきた。その歴史を今に伝えるのが「冷汁」。新鮮な魚を溶かし込んだみそ汁は、山仕事の疲れを癒やす一服の清涼剤。麦焼酎の本場・大分で生まれた『知心剣(しらしんけん)』が、麦本来の香りと飲みやすい味わいで、爽快感を広げてくれる。
江戸時代にシイタケの人工栽培を確立し、シイタケ王国・大分の礎を築いた源兵衛翁は津久見の生まれ。「彼に習って栽培技術を磨き、全国で活躍した“豊後のなば(「キノコ」の方言、特にシイタケ)師”たちが、手軽に作れて栄養ある料理はないかと考え出したのが冷汁の始まり」。そう教えてくれたのは、サンクイーン農家で、マーマレードなどの加工品を作る「草の実加工所」の代表、竹本勢津子さん(81)。有名な宮崎県の冷汁も、元を正せば津久見から広まったものかもしれない。夫の正夫さん(89)が、「暑くて食欲がないときでもスルスルっと食べられ、元気が出るアイデア料理」と太鼓判を押す。
新鮮なアジをたっぷり使い、トロリと濃いめに仕上げる冷汁は、ご飯にかけて食べる。合わせるのは『知心剣』。大分の方言で「一生懸命」を表す名前が付いた麦焼酎は、原料選びから造りまで、すべてに「しらしんけん」こだわった本格派。すっきりとした飲み口が汗をすうーっと引かせ、麦本来の香ばしく甘い香りが食欲を増す。
「お父さん、お母さん、元気?」。ある夏の日、せみ時雨の中を近くに住む娘夫婦が遊びに来た。たびたび様子を見に来てくれる焼酎好きの2人をもてなすのは、水割りにした『知心剣』。話は尽きず、締めの冷汁を食べた後も、ついついグラスに手が伸びる。開け放した縁側を通って、ミカン山から涼しい風が吹き抜けた。
【企画・制作】大分合同新聞社 広告局